大沢寿氏は、長年の信号処理方式の理論的研究を通して、 高密度ストレージに於ける再生信号波形の検討を進める中から磁気記録再生信号 にはPRクラス4と呼ぶ符号方式(PR4ML方式)が記録ビットの持つ信号エネルギー を最大限に利用可能である事を見出し、世界に先駆けて学会や業界に提案を 行った。この方式は、当時業界トップの技術力を持つIBMが、 いち早く磁気ディスク装置(HDD)で採用し、他社に先駆けて記録密度を 大幅に向上したHDDを実現することができた。 その後、同技術は僅かながらも姿を変えつつ高密度記録のストレージ製品 (HDD, MO, DVD等々)に採用され、高密度ストレージを支える重要な技術の 一つとなっている。更に同氏は上記の研究を進め、現在磁気記録の主流と なっている垂直磁気記録の黎明(れいめい)期において、垂直磁気記録方式の持つ 潜在的な高記録密度特性を最大限に引き出すことが可能な正係数PRML方式を 提案した。磁気ディスク装置各社はその研究成果をもとに、 垂直記録方式を搭載した高記録密度の磁気ディスク装置を 出荷するに至っている。同氏は、これらの成果を本学会を含め種々の著明 学会等で研究成果として発表するとともに、教育者として後進の指導を 精力的に行い、同氏の主宰する研究室より信号処理技術分野の優れた知見を 持つ研究者、技術者を多く輩出している。この様に同氏は、磁気記録の 信号処理に関しての理論的検討から応用までの広い範囲での功績があり、 情報ストレージ分野における学究および産業界の継続的発展に 多大な貢献を行っている。
藤尾フロンティア賞 は,映像情報メディアに関連する新しい分野において, 今後大きな効果が期待される研究・開発・創作等の活動を行った 個人またはグループの中から,毎年2件以内を選定します. 受賞者は原則として1件につき3名以内とする. また,活動は選定の時からおおむね3年以内のもの.
研究プロジェクト名: 超大容量高速垂直ストレージシステムの研究
Research on Ultralarge-capacity High-speed Perpendicular Storage System
研究期間: 平成11年度〜平成15年度
研究経費総額: 3億9,295万7千円
プロジェクトリーダ: 中村 慶久・東北大学電気通信研究所・教授
役割分担: 杉田 愃・東北工業大学・工学部・教授 = 高性能機能性磁性薄膜の研究
役割分担: 大沢 寿・愛媛大学・工学部・教授 = 高密度信号処理方式の研究
役割分担: 村岡 裕明・東北大学・電気通信研究所・教授 = 高密度ストレージ方式の研究
役割分担: 沼澤 潤二・NHK・放送技術研究所・研究主幹 = 映像ストレージに関する研究
役割分担: 高野 公史・日立製作所・中央研究所・部長 = ハードディスク装置の要素技術の研究
役割分担: 田上 勝通・日本電気・機能デバイス研究所・主任研究員 = 低ノイズ記録媒体の研究
研究成果 D.特許等取得状況
特許等名称: 垂直磁気記録再生方式およびそれを用いた磁気記録再生装置
発明者名: 大沢 寿,栗原義武,岡本好弘,斎藤秀俊,村岡裕明,中村慶久
出願番号: 特開平11-66755, link from J-tokkyo
垂直磁気記録再生装置およびそれを用いた磁気記録再生装置 特開平11-66755
信号処理デバイスおよびディジタル信号記録装置 特開2005-259349 株式会社日立製作所
記録再生方法および記録再生装置並びに磁気記録媒体 特開2005-293750 富士写真フィルム株式会社 特開2005-293752 富士写真フィルム株式会社
波形等化器およびPRML検出器 特開2003-85764 松下電器産業株式会社(現パナソニック)